真っ青な空と白波のビーチ。
そこに現れたのは、まるでハワイの雑貨屋さんさながらの南国テイストあふれたキッチンカー。
そこだけを切り取ったらまるでハワイのビーチそのもの。
錯覚してしまいそうだが、ここは鳥取の賀露海岸だ。
キッチンカーからは、元気いっぱいの3人の女性が笑顔で迎えてくれた。母と2人の娘さんだ。
今回は、ハワイが大好きすぎて日本にハワイを作ってしまおう!とハワイアンキッチンカー「BIG WAVE」を始めた中尾家のお母様の佳子さんにお話を伺った。
ハワイの星空に感動
佳子さんが初めてハワイを訪れたのは1992年のこと。
ハワイ諸島で最も大きい、別名ビッグアイランドとも呼ばれるハワイ島へ旅行に出かけた。
ハワイ島では、マウナケア山麓での星空ツアーが人気。
佳子さんもさっそくツアーに参加したが、そのときは天候が悪く星を見ることができなかった。
星だけではなく、見えるはずのキラウェア火山も見えなかったという。
これは申し訳ないと、ツアー会社から10年間有効な星空ツアー参加のパスポートをもらった。
期限が切れるぎりぎりの10年目に、これは使わないとと佳子さんは再びハワイ島の星空ツアーに参加。
結果、見事に満点の星空に出会えた。
空一面の星に佳子さんは息をのんだ。
「宇宙を感じました」
天の川がどんなものかもはじめて体感できたという。
「ハワイは最高の場所だ」
このときの感動をきっかけに、佳子さんはハワイへ通うようになった。
娘さん2人も一緒に出かけ、すっかりみんながハワイ好きになった。
滞在中、日中は星を見るのに最高のポイントを探し、その場所を覚えておいて夜な夜な星を見に出かける。
鳥取も星がきれいに見える場所だが、ハワイの雄大な自然のなかで見る星空は佳子さんの心を大きく動かした。
日本にハワイを作ろう
定期的にハワイへ通っていたが、2019年の後半から世界的に流行りだした新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響でハワイ行きが叶わなくなった。
これは佳子さんと娘さんたちにとってはショックな出来事だった。
どうしてもハワイに行きたいという気持ちはいつしか、「日本にハワイを作る」というひらめきへと変わった。
あきらめるのではなく、別の形へと変換させたのはハワイへの情熱ありきだろう。
母娘の3人はハワイの雰囲気をテーマにキッチンカーをはじめることに決めた。
移動式のカフェにしたのは、ハワイをイメージしたときにぴったりな賀露海岸を舞台にしたかったことが大きい。
同じ場所でじっとしていることが好きではないということもあった。
ハワイアンキッチンカーを思い立ったのは、2020年の11月のことだった。
そこからオープンの2021年7月まではあっという間。
さまざまなご縁がつながり、導かれるように準備が進んだ。
フードメニューはハワイでの思い出から
「BIG WAVE」のメニューにはハワイでの思い出がたっぷりとつまっている。
最初にメインメニューに考えていたのは、ハワイアンサンドだ。
佳子さんはハワイで食べたヘルシーサンドが忘れられず、再現したいと思ったからだ。
実際に出来上がったハワイアンサンドはこちら(画像上)。
野菜たっぷりで見た目もカラフル。ハワイよりもハワイらしさを感じる逸品に仕上がっている。
お腹いっぱい食べられるものもメニューに欲しいと考え思いついたのが、ガーリックシュリンプ。
エビをたっぷりのガーリックで炒めた、ハワイのオアフ島北部のノースショアで人気のフードトラックのメニューだ。
フードトラックのなかでも特に人気を得ていたのが、今はなき<MACKYS(マッキーズ)>。
佳子さんはエビが苦手なのだが、マッキーズのガーリックシュリンプは美味しくて食べられた。
この味を忠実に再現したくて作られたのが、BIG WAVEのガーリックシュリンプ。
最初はバゲットにガーリックシュリンプをつけていたが、今はライスになっている。
ガーリックのタレがしみこんだバゲットは食べてほしいので、1スライスのバゲットがシュリンプの下に敷かれている。
ひと手間かかるが、美味しいから味わってほしいという作り手の愛があふれている。
付け合せには、ハワイではパワーフードとして人気のキヌアサラダ。
美味しいだけではなく、体に良いものを食べて欲しいという思いだ。
野菜も地元産を中心に、鮮度を大事にしている。
調味料にも、たとえばバターにしても牧草だけを食べて育った牛のミルクから作られたグラスフェッドバターを使うなど見えないところにまで心配りが行き届いている。
アサイーボウルは、ブラジル原産のアサイーというフルーツをベースにしたスムージにシリアルや果物をトッピングしてボウルに盛り付けたもので、ハワイでは朝食などに人気のメニュー。
他メニューと同様、ハワイで食べた味を思い出して出来上がっている。
こちらは機械の都合で店舗出店のときのみのメニューだ。
このほか、コーヒーなどのドリンクにもこだわっている。
コーヒーが苦手な佳子さんだが、ハワイの酸味の少ないコナコーヒーは飲めたことからアイスコーヒーにはコナコーヒーが使われている。ホットは、高級エスプレッソマシーンで有名なイタリアのマルゾッコ社のものを導入し本格的な味わいを追究。
細部にハワイへの思いとこだわりが光るメニューは、お客さんの心と体にきっと喜びを与えてくれるだろう。
母娘3人で運営してみて
運営において、大変なことはないと断言する佳子さん。
母娘3人で営業するといっても、基本はやりたいと思ったら手伝うというスタンスをとっている。今のところ、みんながやりたくて一緒にやっているというから本当に素敵な家族だ。
何より、好きなことが”ハワイ”ということで共通しているのが大きい。
ただ、3人の息が合うまでには少し時間がかかった。
話し合いは度々したという。
メンバーの気持ちが下がっているときは、お客さんにも影響して人が少なかったという。
今では3人の意思の疎通がうまくできている。
ハワイアンキッチンカーのオフシーズンは、12月〜3月。
この期間は3人がそれぞれが好きなことをしている。
佳子さんはランプ作り、娘さんはアクセサリーを作って販売などとても理想的な働き方が実現している。
これから
今後は、食をテーマとして”体にやさしい”をより大事ににしてゆきたいという。
新メニューとしては、小麦ではなく米粉を使ったスイーツを考えている。
まだまだ、BIG WAVEは進化していきそうだ。
「ハワイを通して、みなさんに非日常を味わって欲しいです。自分を休める時間、リラックスする時間をみつけてほしいですね」
店名の「BIG WAVE」には、”私が私らしくあるために、私が私を生きるために。あなたがあなたらしくあるために、あなたがあなたを生きるために。大きな波を巻き起こせ!”という想いが込められている。
鳥取はハワイに負けず海が美しい。そして自然がある。
多くの人に気づきも与えてくれるミラクルキッチンカーのこれからに期待!
インタビューを終えて
とにかく、明るい。
佳子さんのお人柄は、ハワイの太陽そのままのようだった。
ハワイを語るときの瞳はキラキラと輝き、言葉は情熱的。
大好きだからこそ、思いが入り素晴らしいものが出来上がる流れをインタビューしながら体感させていただいた。
ハワイへ行きたい人は、まずハワイアンキッチンカー「BIG WAVE」をお訪ねくださいね。