はじめて、田中さんをお見かけしたのは、丸由(旧大丸)百貨店のプレイヤーズマーケットに出店されている時。
ブースの入り口に智頭杉を使った組み立て玩具(タテグ)があり、楽しそうに子供たちが遊んでいたのが印象的だ。
田中さんは、鳥取市で子供たちの教育に関する商品や取り組みをされている「イッポラボ合同会社」の代表。
現在、子供の「遊んで学ぶ」「動いて学ぶ」「食べて学ぶ」の3つのカテゴリーをかかげて活動している。
田中さんがこの仕事を始められたきっかけから、現在の活動までの物語です。
アフリカで出会った子供たちは、ボールペンの持ち方も知らなかったことに衝撃
もともと、田中さんは国際協力関係の仕事をしていた。当時は、東南アジアやアフリカに学校を作る案件に関わっていたという。
そのなかで、2013年に東京オリンピックの開催が決まった。日本のスポーツ文化を海外に広める事業が立ち上がり、田中さんはその初年度の事業に関わった。
アフリカで運動会をする取り組みがあり、田中さんはアフリカのマラウィの運動会に参加した。このとき、子供たちに参加賞としてボールペンが配られた。
ところが、そのボールペンの持ち方がわからない子供たちがかなりいた。
国際協力で作られた学校もあるのに、勉強道具を持たず、使い方もわからない子供がいる。
これでちゃんと教育を受けていると言えるのだろうかという疑問が田中さんの中でわいた。
学校を作るだけではなく、ちゃんとした教育が必要だと感じた田中さん。
国際協力団体では対応出来ない部分を個人で何かできないかと考え、起業に至った。
30歳のときに起業。子供のためのおもちゃ作りをはじめる
海外の子どもたちに学習道具を提供したいという思いから、田中さんはイッポラボを立ち上げた。
まず参考にしたのが、アメリカのTOMSという靴のメーカーである。
1足靴が売れたら、1足海外の子供に靴を無償提供している。田中さんは、この仕組みを取り入れることにした。売上の一部を使って開発途上国の子どもたちに学習道具を提供することにしたのだ。
商品づくりについては、子供への教育を考えたときに、まず木製玩具を思いついた。鳥取県が木を使った木育にも力を入れていたことと、補助金も多くはじめやすかったという。
スタート時は知識もなかったので、商品を作っている人から仕入れて販売をした。
現在は、オリジナル商品がメインとなっている。
遊んで学ぶ
イッポラボの3つの大きなカテゴリーのうちの一つが、”遊んで学ぶ”。
教育教材の販売がメインである。
子供の学習を考えるときに、楽しく学べる教材を探す親は少なくないだろう。
商品は、悩みのある人とコラボをして、こんなものがあったらいいなを作っている。
「ひらがながすきになるカード」は、東京の2歳時の子供を持つ父親がひらがなが苦手なお子さんが覚えてくれるようにと作ったひらがなカードから生まれている。イラストから楽しく学べるようになっている。
大人でもクイズ感覚で楽しめる。親子で一緒にやると効果も高まりそうだ。
「タテグ」は、想像力を鍛える道具として作られた組み木製玩具。智頭杉を使い、建具屋さんと考えた商品になっている。並べる、積む、作るなどいろんな遊び方ができる。シンプルな形だからこそ、子供たちの手と頭を刺激する良品だ。
どれも、親子のコミュニケーションが大事になる遊びになっている。このやりとりを通して、子供が自分のやりたいことができる力を育て、自分で達成できる力を育てるねらいがある。
食べて学ぶ
歯医者さんが監修で作られた、オリジナル商品の離乳食スプーンの販売をはじめ、食育イベントを開催している。
地元農家さんとのコラボで、廃棄予定の野菜を使ったイベントなども開催。
それぞれ、悩みから生まれた商品やイベントになっている。
離乳食スプーンは、口がとじられない子供にならないよう、口のまわりの筋力をつけられるようにと歯医者さんと開発した商品だ。保育園で使ってもらったり、贈り物としても人気がある。
動いて学ぶ
スポーツに自身がもてる子を育てたいという思いから、運動教室と陸上クラブも運営している。
教室は2つあり、1つは幼稚園年長から小学生を対象にしたイッポラボアスレティックス。現在、鳥取教室、米子教室、鹿野教室、八頭教室がある。
コーチには、もともと陸上をやっていた人やジムのコーチで本格的な指導を受けられる。
メニューはイッポラボのオリジナル。バランス能力、柔軟性、俊敏性、持久力、身体操作性、瞬発性の6つの要素を鍛えるメニューが用意されている。
もう1つの教室は、陸上クラブ。ワンステップジェネレーションズという名前で、小中学生を対象にした本格的な陸上部だ。例えば、イッポラボアスレティックスで走ることが好きになったら、それをもっと極めるために陸上クラブへステップアップしてもいい。はじめから本格的な陸上をしたい子供もおすすめとなっている。
「動いて遊ぶ」取り組みは、イッポラボではもっとも活動的。
運動好きな子供にはもちろん、苦手な子供にもよりよい体の動かし方を教えてもらえるありがたい教室といえる。
世界の子どもたちの学習環境がよくなるように
商品の売り上げは、最大3%を海外の子どもたちへの学習道具の提供に使っている。
現在は、インドのAOZORA Schoolが提供先になっている。今後はアフリカへも広げていきたいという。
日本の子どもたちのためには、オリジナルの教育道具を作ったり、運動プログラムを作りつつ、世界の子どもたちへの学習支援とつなげていく素晴らしい田中さんの取り組み。
世界中の子どもたちがやりたいことに挑戦できる社会を実現することを目標にかかげ、今後も活動の幅を広げていく。
インタビューを終えて
大きな視点で真摯に課題と向き合い、取り組みを進めている姿勢が印象的。
生み出されている玩具や取り組みはどれも独創的!
ぜひ多くの子供たちや大人に体験してもらいたい。
親子で楽しく学ぶときに、こんなものがあったらいいのにを叶えてくれる人でもある。
ぜひ、気軽に田中さんをお訪ねください。