久松山のあしもと、鳥取市立川町でお花に囲まれたアトリエカフェMを営むウエノユウコさん。
鳥取に育ち、長年の会社員生活を経験したのち、大好きだったお花を通して自分の居場所づくりをスタートさせた。
ハーバリウムの資格をとったことからワークショップを開始する。
誰でも気軽に訪れて、喫茶しながらお花のワークショップを体験できる場を提供。
ウエノさんがアトリエカフェMをはじめられたきっかけから、今後の展望までの物語をお楽しみください。
仕事を退職後、ハーバリウムに出会う
閑静な住宅街にアトリエカフェMはある。
細い路地を入り、山側へと進むと入り口にオリーブの木のある民家があらわれる。まるで植物たちに招かれるように玄関へ。入り口を入ると、色とりどりのお花や植物を使ったリースたちが出迎えてくれる。まるで、おとぎ話の世界にタイムスリップしたみたいな感覚になる。
「自分の居場所を作りたくて、自分の好きな物を集めたんです」
こう話すのは、このアトリエのオーナーのウエノユウコさん。5年前にストレスから体調を崩した。ちょうど子育ても終わったことから、会社を辞めて好きだったお花を使った仕事をしたいと思い立った。第2の人生を自立して歩む決意だった。
もともと、生け花をしているなかで、世間ではドライフラワーが流行りはじめていた。プリザーブドフラワーという加工したお花を使ったフラワーインテリアが一躍有名になり、鳥取にもその波がやってきた。
そのなかで、ウエノさんはハーバリウムという、ガラスの小瓶にお花をオイル漬けしたフラワーインテリアに出会う。手入れをしなくてもお花の美しい姿を保ち続けることができる。さっそく、ハーバリウムの資格を取った。
「人に伝えることによって、お花の良さも伝えたいと思ったんです」
資格を取ってからは、自宅スペースでワークショップを始めた。現在のアトリエをオープンさせたのは2019年のこと。
自分の好きを集めたアトリエをオープン
アトリエカフェMは、ドライフラワーのほかに、ウエノさんご夫妻が好きだというアンティーク家具があふれている。味わい深いテーブルやイス。2階には古いスピーカーがあり、レトロな音が響いている。
アトリエでは、コーヒーなどのドリンクやケーキメニューが用意されている。ワークショップに参加するお客さんが飲食も楽しめるようにというはからいだ。
季節のお花を使ったワークショップが中心
お花のワークショップは定期的に開催している。ハーバリウムを中心に花雑貨が作れる。
お客さんの希望に合わせたオリジナルのものも予約で受け付けている。ふらっとアトリエを訪れて、「今日はリースを作りたい」、「ハーバリウムを作りたい」といった要望にもこたえてくれるというから気軽だ。
ワークショップの発信は、現在はSNSでしている。季節のお花を使ったワークショップがメインで、クリスマスの時期、アジサイの時期、ミモザの時期、冬はしめ縄など。
自身の作品も販売しているが、あくまでもワークショップがメイン。
「年に1、2回は作品展をさせてもらっているので、自分が作った作品を売る機会はいただいています。」
作ったものをアトリエのインテリアとして展示して、それを欲しいと言われたときは販売しているという。
アトリエの天井から吊るされたドライフラワーたちを嬉しそうに眺めながら、「このお花たちは作品になるスタンバイをしています。作ってほしいと言っているんですよね。」とウエノさん。お花愛が伝わってくる。
「お花に自分が癒されています。お花によって救われています」
長く会社勤めを経験し、人間関係や組織の中で働くことがとてもストレスだったというウエノさん。今では、お花に癒やされる毎日を送っている。「私はこの空間が好き!」と思える場所が作れて良かったと笑顔で話してくれた。
ドライフラワーは一番お花のいい状態を残せる
お花を使うにもいろいろあるなかで、ウエノさんがドライフラワーを選んだのには理由があった。
「お花が最も良い状態の時にドライにするので、お花が一番美しい状態を長く保つことができるのが、この方法かなと思ったんです。その部分を生かしたいというか、大事にしたいということなんです。」
お花が一番素敵な状態の時を助けてあげたい、残してあげたいという思いから、ドライフラワーを選んだ。自分が癒やされているばかりではなく、お花たちにお返しをしたかった。
そして、一番自分を表せるのがお花だった。
できる、できないではなく、まずは気軽にやってみてほしい
「もし叶うなら、お花を作れる環境で自分でお花を育て、自分が作ったお花でワークをしていきたいです。」
田舎に引っ越して、自分でお花を栽培して、そのお花で作品を作るというのが老後の楽しみだという。会社員の時には考えられなかったというこのビジョンは、今のアトリエをはじめてから思い描けた。仕事を自分の人生や暮らしにつながるように考えられるようになった。
そんなウエノさんから、フラワーワークショップに興味のあるみなさんへのメッセージをいただいた。
「自分で何かやってみるという機会ってなかなかないから、できるできないじゃなくってまずやってみてください。できなかったら、私が手伝いますのでとりあえずチャレンジしてみてください。」
アトリエには、お花と接する事のない男性や、幼稚園の子もワークショップにやって来る。その人に寄り添うようにサポートしてくれるというから嬉しい。
「お客様の創造性とやってみたいを大切にします。」
このアトリエが、訪れる人をほっとなごませてくれる空間であり続けることは間違いないだろう。
インタビューを終えて
ウエノさんと話していると、自然と笑顔になってしまう。
お花が大好きというのが話の節々から伝わってきて、思わずやさしい気持ちにならずにはいられないのだ。
アトリエのお花たちまで微笑んでいるように感じるのだから、これはすごい。
何度もアトリエを訪れてしまうという、お客さんの気持ちがよくわかる。
ウエノさん自身が自然体だからこそ、リラックスできる空間になっている。
秘密の花園、そんな言葉が出てしまいそうになる。
これからも素敵なアトリエであって欲しい。