4年前に東京から鳥取に移住し、鳥取市内の商店街に飲食店「tottori カルマ」をスタート。
東京では中野にある人気の元無国籍料理店「カルマ」の店主であった丸山さん。
現在は自身の店舗のほか、いろんな人がシェアできる場を提供する#砂鳥ビル、私設図書館「トりんく まんまる」の運営をしている。
仕事柄とはいえ、丸山さんのまわりにはいつも老若男女が集まっている。
今回は、人をひきつける魅力、新しいことに精力的に取り組むバイタリティにあふれた丸山さんに活動のお話を伺った。
東京のロック喫茶の雇われマスターから無国籍料理店「カルマ」へ
学生のころ、丸山さんは東京のロック喫茶の雇われマスターをしていた。
いろんな人が出入りして、集まる人によって場の雰囲気が変わることがとても面白かったという。
学校卒業後、たまたま縁あって保育士になった丸山さん。子どもたちと一緒に場を作っていくことが楽しかった。
場の面白さに目覚めていた丸山さんは、親族が建てたビルの1階を借りて飲食店をしたいと思い立った。
家族を説得し、無国籍料理店「カルマ」がスタートする。
料理の勉強をしたことはなかったが、海外で出会った料理や思いつきで作るメニューが人気に。
まさに無国籍料理だ。
丸山さんはカルマのほか、シェアカフェの運営もしている。一人ではできなくても、数人でシェアしたら続けられるし新しい動きも生まれる。
2011年から8年ほど、中野では年1回”なかの育フェス”イベントが開催されていた。
地域に住まう人たち自身の手で、子育てを通して地域をもっと楽しく豊かにしていきたいという思いでスタートしている。
地域のプロデューサーと丸山さんが運営するシェアカフェの「エカイエ」が中心となり継続してきた。
コロナ禍で当時と同じ形での開催はできなくなったが、新しい形で続いている。
ここでも人とのつながりの面白さを味わってきたという。
鳥取は落ち着く場所だと感じた
中野で無国籍料理店「カルマ」を営んで34年。
多くの人たちに愛されてきたお店だったが、建物の老朽化で閉店せざるをえなくなった。
折しも、東北大震災の影響もあり、東京を離れた場所での継続を考えるようになった丸山さん。
四国や長野などもまわったが、一番落ち着く場所が鳥取だったという。
丸山さんが鳥取と関わりを持ち始めたのは、2012年のこと。
中野の「カルマ」で働いていた人が鳥取で食堂カルンというお店をしていた。
”トットリノススメ”というイベントが2年に1度開催されており、そこに出店する食堂カルンから、鳥取で「カルマ」の料理を出してくれないかという話が来たのだ。
出店のため、鳥取を訪れた丸山さん。
まず、曇ったり晴れたり目まぐるしくかわる天気にファンタジーを感じたという。そしてとても落ち着く。
それからほぼ毎月鳥取に通うようになった。
食堂カルンの場所を引き継いでtottoriカルマをスタート
丸山さんが鳥取を訪れはじめたころ、鳥取で新しいことを始める人達との出会いがあった。
ゲストハウスの「ワイパブ&ホステル鳥取」やこだわりの本を売る「汽水空港」(湯梨浜)、夜長茶廊(倉吉)など。
活動的な雰囲気のなか、現在の「tottoriカルマ」の向かいの上田ビルに空き部屋があるという情報をもらった。
飲食店はできなかったが、丸山さんは空き部屋を借り、まず東京の荷物を鳥取へ移した。
その部屋も締め切りにはせず、「上の空(うわのそら)」と名前をつけて一般開放した。
さすが、シェアスペースの達人だ。持っているものをそのままにせずにシェアしていく精神がここにも現れている。
こうした動きのなか、食堂カルンのオーナーが結婚してお店を辞めることになり、丸山さんはそのまま店舗を引き継いでお店を始めることにした。
お店の名前は中野の「カルマ」を引き継いで、「tottoriカルマ」とした。
初めは東京と行き来しながらだったため、シェアで運営していたが東京のようには上手くいかず、一人オーナーとして運営していくことにした。
看板メニューの中野オムライスは、中野時代からの定番メニュー。
ナンプラー、トマトと辛いひき肉が特徴。病みつきになる味。
お店の2階は丸山さんの持ち物が販売されている。
海外旅で買ったものから、中野時代に使っていた器、お客さんから譲ってもらった道具などバラエティ豊かな物が集まっている。
値段は欲しいと思った人が自分で値段を付けて丸山さんに伝える自己申告制。
このフランクな感じも、この場に来た人たちと一緒にお店を作っていくかのようなシェアの感覚だ。
3階は一人しか入れない本屋を作る予定というから楽しみだ。
持っているものをシェアしていったら楽しいし続いていくし、人と繋がる
鳥取駅前のサンロード商店街の空きビルを借りて始めたシェアスペース「#砂鳥ビル」。
1階は「共有地」という名前でさまざまな人が出店できるスペース。
出店には月1回のミーティングに参加すること。リアルで会って、使い方を集まった人で話し合い決めていく。
きっちりルールを決めるよりも、同じ価値観を共有できる仲間と話し合って決めていくほうがうまくまとまるという。
丸山さんはたくさんの本を持っている。
本屋を棚読みして、ピンと来たタイトルを選んでどんどん買っていくのでいつのまにか図書館が出来るまでになった。
99%は読んでいないという本の数はすごい。
現在、自宅兼私設図書館「トりんく まんまる」が不定期でオープンしている。
入場料を払って入館し、お茶とお茶菓子付きで本が読み放題となっている。
スペースだけではなく、持っているものをシェアしていったら楽しいし、続いていくし、人とも繋がっていくと楽しそうに語る丸山さん。
空き家が多いという状況についても、若い人と一緒にシェアして楽しんだらいいと丸山さんは言う。
これから
#砂鳥ビルを活用し、鳥取内だけでなく、県外の人たちも行き来できる交流の場を作っていきたいという。
実際に、中野のシェアカフェが出張してカフェをする計画も立っている。
「tottoriカルマ」は近くの動物公園とのつながりを持たせた空間も考えている。
丸山さん自身も常に変化している。
「周りが変化しているから」
周囲の変化に合わせて丸山さんも「面白そう」だからと取り入れていく。
その飽くなき精神が丸山さんの魅力でもあり、バイタリティにつながっているのだろう。
今後の変化がますます楽しみだ。
インタビューを終えて
今までも数多くのインタビューを受けてきたという丸山さん。
今回の取材では、過去ではなく現在に重きを置いてお話を聞かせていただいた。
といっても、過去を見ようと現在を見ようと、丸山さんの根底に流れているテーマは変わっていない。
それがすごいと感じた。
ゆるぎない軸があるからこそ、自信を持って行動に移してゆける。
年齢を感じさせず、若者のような果敢な精神に圧倒される。
個人的に、東京出身のわたしは中野のカルマは知っていたし、シェアカフェにも行ったことがあった。
まさか、そのシェアカフェも丸山さんが運営していたとは今回初めて知ったことだった。
中野といったら代表するカフェとして必ず上がってきた「カルマ」さんがまさかの鳥取へ。
そして新しい展開が次々と始まっている。そう、みんなで一緒にシェアして行きましょう!