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智頭町

【古谷浩平・葉子さん】次の世代が農業をしたいと思えるようにやっていきたい

ちずの農家旬菜屋 古谷浩平(ふるたに こうへい)・葉子(ようこ)さん

鳥取の南東部に位置する智頭町。

町の9割を森林が占め、町は「森林セラピー」事業を推進している。のどかな山村の原風景が広がっている。

その山間でブドウを育てているのが、ちずの農家旬菜屋の古谷さんご夫妻。

ご主人(園主)の浩平さんは農家の出身ではないが、ブドウのご縁に導かれ2011年に新規就農。

京都府綾部市出身の葉子さんとともに子育てをしながら農家の暮らしをしている。

今回は古谷さんご夫妻にお話を伺った。

ブドウのご縁に導かれてワイナリーに就職

旬菜屋のいろとりどりのブドウ

ご主人の浩平さんは、鳥取大学農学部の出身だ。

農学部を選んだのは、理系で生物や植物が好きだったからだった。

農業をしようとは思っていなかった。

ここで、浩平さんはブドウ専門の先生と出会う。

ブドウ図鑑を出されるほどの専門家である先生との出会いは、浩平さんをブドウ農家へと導く最初のきっかけだった。

授業ではブドウのことを知るだけでなく、育て方など幅広いことを学んだ。

就職は、京都のベンチャー企業のワイナリーに勤めた。

ここで浩平さんはとても素敵なブドウ農家さんと出会った。

「僕のメンター(助言者)です」

この出会いが決定的なものとなり、後に浩平さんはブドウ農家になることを決意。

ブドウが繋げた出会い

スポーツインストラクター時代の葉子さん

一方、このとき奥様の葉子さんは京都の与謝野町でスポーツインストラクターをしていた。

学校を卒業後、はじめは京都の農業法人に就職したが、もっと人と関わりたかったことからスポーツクラブに転職。

このスポーツクラブに浩平さんが水泳に来たのが、二人の出会いだ。

浩平さんが勤めていたワイナリーは、スポーツクラブから近いところにあった。

まさに、ブドウが繋げてくれたご縁。

葉子さんも泳ぐことが好きなことから、水泳はお二人の共通の趣味になった。

智頭町で新規就農

白ネギの収穫

浩平さんはワイナリーを退職後、建設会社でウッドチップを利活用したリサイクル事業に携わった。

5年ほど働いたのち、自分で考え、商売をしたいという気持ちが強くなり、自営業を決意。

今まで最も携わってきた時間が長かったブドウを育てたいと考えた。

京都で出会ったブドウ農家さんへの憧れもあった。

こうして、2011年に浩平さんは地元の智頭町でブドウ農家として新規就農した。

1年目は鳥取県の制度を使って研修を受け、2012年に完全に独立。

収穫したての白ネギ

ブドウは実るまでの時間もかかることから、収入源として町の特産品の白ネギの栽培も始めた。

生産者部会に入り、生産者たちとの交流もしながら農業を進めている。

葉子さんは京都から鳥取へ移住

ガーデンマルシェでブドウを売る葉子さん

2014年の4月、葉子さんは浩平さんとの結婚とともに京都から鳥取の智頭町へ引っ越した。

それまでは、砂丘へ遊びに来たことはあったがそこまで鳥取にゆかりがなかった葉子さん。

予想がつかなかったが、鳥取に来てみると浩平さんのつながりですでに周囲の人たちはみな葉子さんのことを知っていた。

「みんなフレンドリーですんなり受け入れてもらえました」

仕事はそれぞれで好きなことをしたらいいという浩平さんの考えがあったが、葉子さんはがんばっている浩平さんの姿を見て自分もやってみようと就農。移住して半年後のことだった。

農業のかたわら、葉子さんは副業でアナウンサー業の仕事も勤めた。

司会をしている葉子さん

スポーツインストラクター時代に興味があって、アナウンサーの勉強をしていたのだ。

鳥取では披露宴の司会や、FM鳥取の朝のニュースなどを伝えるなど活躍した。

アナウンサー業は子供が生まれるとともに辞め、今は子育て中心に家の中で出来る作業に取り組んでいる。

ブドウ作りへのこだわり

育てているブドウは30種に及ぶ。

秋になると次々と色とりどりのブドウが店頭に並ぶ。

すでにファンが多い旬菜屋さんのブドウを待ち遠しく思っている人も多いだろう。

店先(ガーデンマルシェ)に並ぶブドウ

新規就農でブドウづくりをはじめた浩平さん。

ブドウのことをある程度知ってはいたが、実際に育てるとなると勝手は違う。

教科書通りにはいかない農業に試行錯誤を続けている。

厳しいことも多いが、ブドウ農家としてスタートできたことはとても嬉しかった浩平さんは笑顔で言う。

「上手くいったときは本当に嬉しいですね」

1年に1回しかブドウ作りは経験できないのをあと何回できるか、と真剣な思いがある。

そんな浩平さんのブドウ作りへのこだわりは、”できるだけ美味しいもの”を作ること。

見た目がきれいではなくても、熟れたての最も美味しい時期に採ってきたブドウを食べてほしい。

売るために完熟前に収穫したブドウではなく、木で完熟させたブドウを店頭に並べて販売する。

以前は栽培方法にこだわっていたが、今は美味しいブドウを作るという結果を重視している。

干しブドウも販売

生ブドウだけでなく、季節を問わず楽しめる干しブドウの販売もしている。

濃縮された完熟ブドウの深い味わいが魅力だ。

クラッカーとチーズでアレンジ

専用の乾燥機で温度と湿度を管理しながら丁寧に乾燥させたブドウは、ワインのような酸味と甘み。

もちろんアルコールは不使用。

ワイン好きだけでなく、子供でも美味しく食べられるワインのような干しブドウだ。

皮ごと半分にカットされ、果肉部分が直接舌に触れるのも美味しさの秘密。

プレゼントにもおすすめのパッケージ

これから

浩平さんは、美味しいブドウづくりとともに、増えている休耕田をできるかぎり引き受けたいという思いがある。

メインの農業とのバランスを見ながら進めていく予定だ。

自営業で夫婦がそろっているので、保育所には預けずに子育てをしているお二人。

葉子さんは子供ができたことで手作りお菓子に挑戦。

意外に簡単にできることがわかり、お菓子づくりに取り組んでいる。

今後、自家製の米粉で作ったお菓子の販売を考えている。

そんなお二人の共通の夢は、次の世代が農業をしたいと思えるような農業をすることだ。

「面白そうに見えるようにやっていきたい」

やっていることがお手本になるようなパターンを作っていきたいと語ってくれた。

お二人の活動は、季節ごとに発行される、葉子さん手作りのニュースレターで紹介されている。

米粉を使ったお菓子のレシピなども掲載。

このほか情報はインスタグラムやフェイスブックをご覧ください。

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インタビューを終えて

今回の取材は晴天のもと、旬菜屋さんの軒下でスタート。

お子さんの笑顔とはしゃぐ姿に癒やされつつ、古谷さんご家族の暖かさも感じながら和やかな時間を過ごした。

お話を聞きながら、お二人がそれぞれにお互いを尊敬しながら、謙虚な姿勢で手を取り合いながら暮らしを営まれている姿が浮かび上がってきた。

大変なことも多いだろうなかで、奥様の葉子さんは笑顔で「全部ひっくるめて今の生活が楽しい」と言う。

その姿勢にとてつもない強さを感じる。

そして、そんな奥様に「やりたいことをしてもらいたい。自分の幸せを追求してほしい」と言う浩平さん。

素敵なご夫婦のこれからを心から応援したい。

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