鳥取駅前の商店街。
シンボル的な存在の丸由百貨店のある通りに、1946年1月に創業の老舗「ヲサカ文具店」がある。
この文具店に2021年8月末にジューススタンド「めじろ」がオープン。
文具店にジューススタンドという斬新な組み合わせで一躍注目を浴びた。
このジューススタンドをオープンさせたのが、尾坂亮さんだ。
ヲサカ文具店を主に経営しているのは尾坂さんの両親。
尾坂さんはジューススタンドを始めたほか、すぐ横のサンロード商店街には空き店舗を利用して飲食店「メヒポ」も経営。東京でも飲食店を経営し、鳥取との2地域居住をしている。
今回は、この尾坂さんにお話を伺った。
子供を地方で育てたくて鳥取に帰郷
尾坂さんはヲサカ文具店の長男として鳥取に生まれる。
高校を卒業すると、大学に通うために東京へ出た。
卒業後も東京に住み、現在は3店舗の飲食店を経営している。
そんな尾坂さんだったが、結婚して子供が生まれると地方で子育てをしたいという気持ちになった。
東京以外の場所でのお店の展開もしたいと考えていたなか、実家の文房具店との関わりをもちたいという思いもあり、2020年9月に思い切って鳥取に戻ってきた。
最初は鳥取で何をするかは考えていなかったが、いろいろな人と話すなかで形が出来ていった。
文具屋に人が来てくれるきっかけを作りたい
100円均一など、安価に気軽に文房具が買えるこのご時世、尾坂さんは文具屋に人が来てくれるきっかけを作りたいと考えた。
東京で飲食店を経営してきた経験をいかして、シンプルで子供から大人まで気軽に立ち寄れるジューススタンドを思いついた。
文具屋内に併設して、ジュースを買いがてら店内も見てもらえたらという思いだ。
お店をしながら、両親など家族と関われるということも大きかった。
2021年8月末、ジューススタンド「めじろ」がオープン。
店名の由来は、鳥のめじろが、果物を好んで食べることから。お店の看板キャラクターになっている。
ジュースは子供でも安心して飲める素材を使い、季節のフルーツを中心に加熱することなく搾汁するコールドプレスで作られる。
家庭ではできないような設備で、ここに来て飲んでもらいたいという思いだ。
消耗品ではなく愛着をもってもらえるような文具をセレクト
一方、ヲサカ文具店には、一般的なノートや筆記用具などの文具が揃うほか、キャラクターのほか洗練されたデザインの文具も並んでいる。
文具店は両親が中心となって商品のセレクトをしているが、尾坂さんもこだわりの商品を選んで並べている。
「消耗品ではなく、愛着を持ってもらえるような文具を置きたい」
東京の店舗で、100円均一のペンを買ってはすぐになくしている従業員を見て嫌だなと感じた尾坂さん。
文具を大切に使ってほしいという思いから、ちょっとしたご褒美やプレゼントにも使えるような商品をセレクト。
大量生産のものと差別化して、他にはないこだわりの物を増やしていきたいという。
文具店にいるようになって、尾坂さんは両親の文具の知識の凄さを知った。
この知識はお客さんに文具屋さんに来てもらう理由になるし、専門店としてのあり方も大事だと感じた。
老舗文具店としての良さと新しい感覚のものを取り入れる良さの両方がいいバランスで混ざり合う場を目指している。
オリジナル文具を開発
尾坂さんは愛着を持ってもらえる文具を売るだけではなく、開発もしている。
鳥取の素材を使った文具ということで、鳥取砂丘にちなんで、鳥取の「砂」を使ったボールペンを作った。
友人たちとの飲み会で砂ペンを作りたいという話をしたところ、ご縁がつながって多方面からの協力を得て完成した。
少し話しただけで、人と人とがつながっていくのは鳥取ならではの結束だ。
良い意味での狭さがある。
鳥取駅前の雰囲気を良くしていきたい
鳥取駅前のアーケードのあるサンロード商店街。
居酒屋や老舗喫茶店、八百屋などが軒を連ねる一方空き店舗も混在。
子供のころからサンロードは好きな場所だったという尾坂さん。
駅前ということもあり、県外から来る人と地元の人が混ざり合う場所でもあるこの商店街は可能性がある。
近所で飲み屋をしていた友人と一緒に飲食店をすることにした。
2022年5月、メキシカン料理を出す「メヒポ」がオープン。
取材時点では、木金土の夜のみオープンしている。
駅前を面白くしていきたい、と尾坂さんは楽しそうに語る。
これから
空き店舗の多いサンロードで、新しいコンテンツを作っていきたいという尾坂さん。
1人ではなく、現在一緒にお店をしているメンバーでリキュールの製造を考えている。
飲食と合わせ、みんなが気軽に遊べる卓球もできるような店舗を企画中。
こうした企画は友人たちと飲みながら生まれることがほとんどだという。
「まずは話すことが大事」
そこから次のステップが生まれていく。
そして、実際にやってみる。
やってみてわかることを大事にする。
「このやり方が一概に良いとは言えないですけどね」
はにかみながらも、今後への情熱が伺えた。
インタビューを終えて
気さくなお人柄という印象から、お話を伺うと情熱的に行動されている姿が浮かび上がってきた。
その場のノリを大切にしながらも、着実な信念のもとに動いている。
「みんなから助けてもらっていて」
尾坂さんの人望の賜物と思える。
今後の展開もきっと意表をつくものに違いない。
ぱっとひらめいたそこには、きっと大切なものがある。
「ぜひ一緒に楽しみましょう!お気軽にお店に来てください」
読者へのメッセージに笑顔でそう答えていただいた。